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ふらみいの、とうかの、言葉吐しと成長録

 幸い、僕はまだ周りの友人や近しい人の死をあまり経験していない。
 親戚だったら、年齢もあってそういう別れを経験したことはあるけど、所謂、自殺という形で別れたことは無いのだ。
 それはきっと幸運なことだし、できれば味わいたくない悲しみだと理解はしている。

 テレビでちょっとだけ見たような芸能人が亡くなって、大騒ぎになって、それはいつも遠い世界の出来事と感じていた。
 けど、今日、待合室で見たテレビに映った方は、ちょっと前に話題になった方だったので、何だか純粋に驚いてしまった。
 と、同時に、思うことがある。死を選べたのは、何故なのか。

 本人の苦痛は本人にしか解らないけど、死を選ぶほどの苦しみだったなら、それは誰かに預けられるものではなかったのだろうか。
 誰かに預けて更に絶望したから、もう死ぬしかなって思ったのだろうか。
 僕も何度も味わった辛苦だ。もう死にたい、もう死ぬしかない、もう消えたい、もう停止したいと何度も願った。

 それでも生きているのは何故か。
 自分の好きな人達から離れてしまうことが怖かったからだ。忘れられてしまうことも怖かった。
 全て手放してしまいたいと思っているのに、今まで手に入れた喜びも悲しみも忘れてしまうのかって思ったら、とてつもなく怖くなった。
 それに、死の間際に「あぁやっぱり生きていたかった」と知ってしまう瞬間が、堪らなく怖かった。
 生きるのも怖いけど、死ぬのも怖いのだ。

 だからどうすればいいのか解らなくて、やっぱり誰かに助けてほしいと思ってしまって、手を伸ばしたのが友人達だった。
 その手を伸ばす先、一番頼り甲斐のある子に梯子を外されたから、僕は壊れてしまったわけだが。
 よっぽど死んでしまいたいと思ったけど、今でもこうして生きている僕に感謝してほしい!
 君を言い訳に自殺だってできたのに、祟ることだってできたのに、その道を選ばずに君を許すことにした、そんな僕を誰か褒めてほしい。

 それはともかく、僕はそういうビビリなので、「死にたい」の一歩先を行った方々が不思議でならない。
 怖くなかったのか、辛くなかったのか、生きることはそれより辛く怖いから、死ぬしかないと思い切ったのか、それはどんな衝動なのか。
 興味本位で訊きたいだけと言われれば、そうかもしれない。だって僕には越えられない崖の向こう側だもの。
 僕のように「死にたくないのに」と思ったりしたのか、教えてほしい。

 テレビに映ったあの方は、自分にとても素直な方だったのかもしれない。
 もう鬼籍に入った方のことだから、あれこれ言っても答えなんて解らないけど。
 LGBT云々のくだりもあって、少しだけ気になっていた。
 確かに自分勝手だったけど、その行動を完全に責める気にはなれなかったのだ。
 していいってわけじゃない。ただ、責める気は起きなかった。

 僕は身体の性の認識は変わっていないし、心の性とやらも変わってはいない。ただ、「こういう側面があるから、一概に決め付けられるものではない」という見方は強い。
 それに、性別より何より僕は僕だという意識がとても強いから、他者も自分も抱えている性別なんて、さしたる問題ではないとも思う。
 性別が問題になるのは、人間が「産めよ殖やせよ」という義務を持っているからじゃないか。そこには確かに男と女が必要になるから。
 そうじゃない場面で、性別の括りが必要になることってあるのかな。あるかもしれない。
 でも、僕が誰かを見る時、性別なんてあんまり問題ではない。そういうものの見方もあるんだってことが解って、ちょっとだけ救われた。

 僕は恐らく全性愛者の傾向が強く、自分を愛してくれさえするなら、性別も種族もあまり関係ない。
 肉体での関わりもやぶさかではないが、精神的な繋がりが薄いのなら、そもそんなことに意味は無い。
 人間の本質から随分と逸れていることは自覚している。でも、もう無理をして自分に合わないことを続ける必要は無い。
 僕も大抵、自分勝手だ。それを周りに話して、理解してもらえないとしても、知っておいてほしかった。
 生きることは我儘ばかりで、その我儘で誰かを悲しませることもある。その時はとてつもなく腹立たしいが、僕は時間を掛けて許すことにする。
 呪い、憎み、何もかも無くなった後の虚無で、我ながら馬鹿だとは思うけど。

 この方は自分で自分のことを許していたのだろうか。それとも、罰したい気持ちが強かったのだろうか。
 衝動的なものが多分にありそうだから、どの原因が理由でって断定は難しそう。
 いきなり死にたくなって、目の前に道具があったら、魔が差す人だって居るだろう。そういう状況だったかもしれない。
 なんにせよ、静かに眠ってほしい。でも、自分が遺したものを見守ることだけはやめないでほしい。
 最低限の責任も負えなければ、自分らしさなんてただの絵空事になってしまうもの。

 どうやって向こう側へ渡るのだろう。僕もいつか渡れる時が来るのだろうか。
 それまでに幾つのものを許して、幾つのものを憎むのだろうか。
 もうすぐ誰かに会える、或いは再会できるという予感を抱いて、ただ静かに時を待つ。


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