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ふらみいの、とうかの、言葉吐しと成長録

 身を焼き尽くさんばかりの光を浴び、自分も見えなくなるほどの闇に堕ち、そんな乱高下の激しい精神で辿り着いた今日。
 ほんの二週間前に死にそうになっていたことは記憶に新しく、というか昨日のことのように感じ取れるし、なんならまだ終わっていない。まだ僕は死にたい生きたい辛い苦しいを繰り返している。そう簡単に抜け出せるものではなかった。

 信じると決めても、何かのきっかけでひどく落ち込む。
 もういいやと諦めようとしても、ここで諦めたら永遠に途切れてしまうのではと不安になる。
 どちらも不安障害から来るものなれば、薬でどうにかすることもできよう。
 自分の性格から来るものなら・・・・・・やっぱ死なないと治らないかな。
 生物として、本当に欠陥だらけだ。前も向けず、後ろを眺め続けることもできず。

 先日、夢の合間にやってきた白い青年はサザンと名乗った。
 サザンと言えば某人気グループしか浮かばなかった僕は、もっと良い名前は無いのかと思ってしまった。
 彼は白い髪に白い患者服のようなものを纏い、猫目だった。控えめながらもしっかり喋る子で、ごく自然にうちを訪れた。

 サザンが元々居たのは、あの子の住んでいる方だった。
 僕が呪詛を行った後、土地神が離れ、牛鬼のような奴らが餌場として活用すると息巻いて出ていった後、居場所が無くてこっちに来たのだという。
 これは正真正銘、僕の行いによる被害者なので無碍にはできない。すまんかった。

 夢の合間に彼は言った。自分がここに来た理由と、界隈ではちょっとした騒ぎになっていたことを。
 巫子が久しぶりに力を使ったと、彼らの間では少し騒がれていたらしい。姉さんが何かした方が影響力は強いだろうが、僕が何かやってもそれはそれで気になる連中が居るようだ。
 それで渦中の巫子が気になって、ここまで来たのだと。

 サザンは何人かの人間の気配を覚えていて、僕の辛い気持ちだとか苦しい思い出を知って目を丸くした。
「巫子ともあろう人が、あんな人間を気に掛けているのか?」
 第一声はこんな感じだった。君らは皆して同じようなことを言うな。

 だけど、皆そう言った後、必ず言うんだ。「大丈夫だ」って。
 何が大丈夫なの、どう大丈夫なの。僕が壊れると不都合が生じるから、てきとうなこと言って延命させたいだけなんじゃないの。
 それでも皆が言う。「大丈夫だ」と。その先は言ったり言わなかったりする。

 サザンは「大丈夫だ、反省しているから」と言っていた。
 いくら反省してくれていたって、それがこっちに伝わらなきゃ意味ないじゃん。行動に移してくれなきゃ解らないじゃん。
 でも、あの子が僕に関して責任取ろうとしたことなんてほぼ無いし、反省していようが考えを改めようが、こうして離れた時はいつも僕から話し掛けなきゃ、再構築もままならなかった。
 そんな子が、反省したとて、悪いと思っていたとて、自発的に動けるだろうか。しかも僕の為に。信じられないし、期待できない。
 でも、だからこそ信じたいし、期待したい。他の人間との付き合いを経て成長しているのなら、今までは無かった誠意だろうが行為だろうが、僕相手にも見せてくれるかもしれない。

 そうやってぐるぐる思考に陥って、泣けもしないほど傷付いて、自分が悪かったのか相手が悪いのかなんて疲れてくると、サザンは少し困ったような顔をする。そんなことで傷付くんだ・・・・・・という感じの顔だ。
 巫子って呼んでくれるのは嬉しいけど、今は人間だもの。人間になんて生まれたくなかった。こんなことでって思われることで容易く傷付き、壊れるんだよ。

「そうして悩めるあなたの為に、偉大なるお二方が動いてくださっているのでは」と言われた。
 確かに唐突なタイミングで闇の主と再度意思が繋がり、光の君が降臨した。あれは風呂場でだったか。相変わらずタイミングが悪い。
 二人の反応もやっぱり「え、そんなこと?」て感じだったけど、僕が傷付いているのを知ると、力を貸してくれると言っていた。
 ただ、二人の力を貸すということは、どういうことなのかを考えておいた方がいい、と誰かに言われた。紅弥だったか、エシュだったか。

 僕の力ではどうにもできない。藁にも縋る思いで、何だって試す。
 それほど追い詰められた。誰も傷付けずに、僕は僕の大事なものを取り戻したいだけ。
 不可能かもしれないけど、やりたいの。解り合える機会があるなら、是非とも話したい。
 僕のそういう思考を、主も光の君も愚かだと思ったことだろう。
 でも、仕方ない。今は僕も同じ世界に生きる人間だもの。まだ手放せない。どうして。代わりなんてどこにも無い。

「巫子の考えることは不思議なことばかりだ」と呆れたのか、感心したのか解らないようなことを言われた。
 まぁ、僕もそう思う。病気もあるとはいえ、些か偏り過ぎではなかろうか。
「あなたはあなたの意思と力で好きにできるのに、そうしないのか」みたいなことも言われたが、好きにできないのだ。
 僕の力はバッファー向きだもの。そんなこと十年前から解っていた。自分で対象絞って何かやろうとすると、絶対に失敗するんだよ。失敗とまではいかなくても、目標を達成することが困難なのだよ。
 この前だって結果を確認する形になったけど、ほぼ向こうは無傷だよ。ちょっと体調崩したかなくらいで。もっと大きな何かが起きれば自分に自信も持てたろうけど、こんなんじゃ無理だよ。

 そうして泣き言ばかりの巫子にサザンはより一層、困った顔を見せる。あまりにも俗っぽいから、聞いていた話と違うって思っているのだろうか。
 器である姉さんが有名人だったのはまぁ解るけど、その寵愛をいっとき受けただけの巫子なんて、みんな記憶に留めてもなかったろう。否、時間の感覚が違うなら、つい昨日のことみたいに知っているのかな。

「巫子はすぐ自分を傷付けるんだな」と言われる。んなこと言われたって。
 自分に都合のいいように考えても、絶対そうじゃないって思いが付き纏う。間違っているのに、ちゃんと現実も見ないで良いことだけ見て生きていくのは、軽蔑している人間達の生き様そのものだ。
 だけど、人間として生きるならその方がよっぽど良い。幸せになれるし、傷付くことも少ないし、少なくとも人間の責務は全うできる。彼らは人間であるためにそうするのだ。

 そうできない人間も勿論居る。僕はそういう人達の方が好ましいと思って、近くに居る。
 サザンからしてみればどちらも愚かしいかもしれないが、僕にとっては身近な存在なのだ。愚かだろうが何だろうが好きなのだよ。

 陽が射す方が温かい。こんな僕にも優しいし、光を与えてくれる。
 いつかこれも取り上げられる。僕が浴びるには勿体ないもんばかりだった。

 サザンにとっては期待通りではない巫子だっただろう。僕の知ったことではないが。
 人間ひとり思い通りにできない。力があっても上手く使うことができない。自分の感情も思い通りにできない。誰かに頼ったって、何度言葉を繋いだって、不安に勝てなかった。
 どんどん状況や立場が悪くなっていって、ここより下に行くことが怖くて、でもいつか行くことになるだろうと思っていた。
 もう来てしまった。何年も前から危惧していたことは、ここのブログを遡れば解る。
 こんなに長いこと恐れて、ひとりで不安を抱えて、育てて、壊してしまったんだな。
 話しても、あの子が、きいが向き合ってくれないって思って、ひとりで抱えてしまいこむしかなかったんだな。しまえてないけどさ。

 今だったら違うかもよ。なんだかんだ僕の話はちゃんと聞いてくれるだろ。
 そりゃ逃げ回るし、責任とか取りたがらないし、自分のこと悪く言われるのにも慣れてないだろうし、僕に言われるのも不服だろうけど、聞いてくれないことはないよ。
 そうやって目の前で話してきたし、逃げたの追いかけたし、喧嘩もしたし、赦したじゃないか。それも完全な形ではなかったが、何とか繋げてきたじゃないか。
 向こうだって解っていたよ、ここが特別な繋がりだってこと。周りに理解はされないだろうってこと。だから、僕ときいとでしか守ることができないんだって、そこまで知っておいてほしかったよな。

 昔の僕よ、辛かったよなぁ、苦しかったよなぁ。何年も一人で考えて、抱えて、人に話しても「向かい合ってもらえなかったんだね」って、すぐバレてさ。
 そうして僕が抱えた辛苦も孤独も、人に執着することを覚えた今のきいなら、少しは解ってくれるのかな。
 そこでやっと報われることを望むよ。願うよ。そうすることがきいにとって良いのか悪いのか、そこまでは解らないけど、僕はきいのこと知りたいし解りたいし、僕に対してもそうしてほしいね。

 上から目線ですまない。僕にも解らないことばかりだ。
 ただ、何かを犠牲にしたまま何かを得て、その犠牲が僕ばかりなのは、ちょっと納得いかなくて。当たり前だろ。
 話したいな。全部ぶつけて、同じものを背負ってほしい。誰が傍に居るとか関係ない、ここでのことに他の人間を交えて、いったい何になる。そうじゃない。

 解ってほしい。解りたい。仲良くしたい、同じように望んでほしい。
 誰も傷付けることなく、失うことなく。
 僕はきいの言ったことで随分と傷付いたが、向こうもたぶん僕の言ったことで傷付いたことくらい、あると思うんだよな。

 いつも醜いものが溢れて、暗い感情ばかりになって、辛くて苦しくなってどうしようもなくなるけど、それら全てをこうして形にして吐き出していくと、最後に残るのはいつも「仲良くしたい、失いたくない」だけだ。
 僕が好きだった居場所は段々と消えていく。でも、思い出の中にちゃんとある。君らの中にも、忘れられているだけできっと存在している。それが信じられるから、まだ生きているのだと思う。
 きい、だっけ。この子にも届いてほしい。彼女がどれだけ信じて、好きで、嫌いで、必要としていたか、ちゃんと伝わるといいな。
 そんな小さなことが伝わらないほど、残酷な世界じゃないんだろ、ここ。
 最後には何かしらが報われて、救いだと信じられるようなことが起きるといい。起きてほしい。

 サザンはやっぱり困った顔をしている。でも、ちょっとだけ笑った。
「巫子は夢想家って言うのか、夢見がちなんだな。でも悪くないよ」
 喧嘩売られてんのかな。

「この人間と繋がれるかどうかは解らない。でも、繋がれるといいと思う。その為にお二方が来てくださった。こんなにもあなたは愛されている。人間ひとりと繋がれない道理なんて無いと思うけど、どうなるかは解らない」
「でも、繋がりは消えていない。だったら大丈夫だと俺は思う。黄色でも、緑でも、青でも、その人間との大切な繋がりだから、消えない。消さなくていい。あなたが望むものを手に入れられるよう、祈る」

「捨てなくていい。いずれ光は当たる」

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たった一週間の間、山のドン底に居て、谷の頂点へと昇った。
 死にたい、生きたい、苦しい、辛い、悲しい、ごめんなさい、などなど様々な感情が交錯して、消えて、浮かんで、また生まれて死んだような状態。
 今までで何度目かの挫折と苦痛で、何もする気が起きなくて、食欲まで落ちて、もう生きていく気が無いのだと思った。

 その一方で、最後に縋りたい、話したいと、片っ端から友人らに話をした。
 去年からここまで、話し始めたら際限がないからと遠慮していた間柄にも話をしまくった。
 みんな、快く話を聞いてくれた。「抱え過ぎないで、辛くなったら話してくれ」と言ってくれた。
 これが自分の築いてきた財産なのだと、改めて知った。

 べつに友人らを軽んじていたつもりはない。話が通じないなどと思っていたわけでもない。
 だけど、何となく僕は一度頼ると依存して相手に迷惑を掛けてしまうのでは、と恐れていた。それを恐れて、あまり人に話をしないようになっていた。
 あの子しか頼れないと思っていたわけじゃない。でも、憚られると思って、話をしないでいた。

 あの子と話せなくなってから、いろんなことを感じた。多くは負の感情ばかりだったけど。
 その間、友人らとただ一緒に遊んだ。話をした。それがどれほど救いになっていたか、解らない。
 家族にも救われた。もう前の家族のように、知らぬ存ぜぬはしない。ちゃんと解決策を共に考えてくれて、カウンセリングや病院にも理解があって、援助だって惜しまずにいてくれる。
 今の僕には、これまで泣き言を零して自分に自信が無いながらも築いてきた、多くの関係があった。ちゃんとあった。

 そう考えたら、やっぱり二十年を重く受け止めるあの関係を、簡単に諦めることはできない。
 それでも、今は時間と距離を置くのがいいのかもしれないと、やっと思えるようになってきた。まだ先のことは解らないけど、もしかしたらまた話せるようになるかもしれないと。
 その反対の可能性だってある。二度と話せず、このまま会えないまま、関わらないまま、それぞれ生きていく可能性。
 それを考えるのはまだ怖いし、悲しい。未だにどうしてこんなに拘るのか、自分でも解らないけど、離れるのが耐え難く、ただ痛かった頃より、少しだけ楽になれた。
 この先で交わるということを、信じられるようになったのかもしれない。

 未来を信じるというのは、誰にでもできることではないと思う。
 自分がいつ死ぬか解らない、この先を生きていくなんて考えられない、そういう年数を重ねてきたから、十年後とか二十年後のことなんて真剣に思ったことはない。
 長期戦になると分が悪いから、いつも短期決戦だった。明日死ぬかもしれないから、さくさく決めて刹那を生きるのが正しいと思っていた。
 それが、少しだけ自分が長く生きることを許せるのではないかと、初めて思えた。

 勿論、今は友人らに聞いてもらった直後だから、奇跡に感動して楽観視しているだけという見方もできる。人間、すぐさま明るくなれるというわけじゃない。
 だけど、明らかに四日前と比べて、冷静になれた気がするのだ。思考に変化が起きたのだ。

 おまじないでも、音楽でも何でも使えるものは使って、相変わらず会いたい。
 会って話がしたいと思うし、ともだちやめたくないし、失いたくない。
 だけど、本当にここで会えなくなったとしても、もしかしたら受け入れられるかもしれない。
 次の世界で会えたらいいなって思えるようになれるかもしれない。
 可能性ばかりだが、今までは顔を背けて言葉にもしたくなかったものを、少しずつ受け入れている。
 僕は会いたい、話したい、失いたくない。相手にもそう思ってもらえたらいいと、願っている。
 それが無理だったとしても、あまり責めたくない。もう責めたくないとか、善人ぶって思っている。

 悲しくないわけじゃない。虚しくないわけじゃない。トラウマになったし、思い出すと引き戻されて辛くなる。
 だけど、誰もが「それ以上もう傷付く必要はない」と言ってくれた。「自分のことを貶める必要はない」と言ってくれた。
 僕はそう言ってもらえるだけの価値があったんだ。そういう関係を、この三十五年の中で苦しみながら、失敗しながら、作ってこれたんだ。これが僕の築いたものなんだ。

 まだあの子に話し掛けてしまう。呼び掛けてしまう。癖みたいなものだ。
 だけど、その声から険が薄れていくのが解る。ちょっとずつ。
 僕はまた凄い速さで変わり始めたのだろう。その中でも変わらずにいよう、大事にしようと新たに決めたものがある。
 馬鹿を見ることが多いけど、やっぱり素直に誠実に在りたい。

 また挫折するだろうか、傷付くだろうか、辛い苦しい死にたいと涙することはあるだろうか。
 そこで手に入れたものを手放さず、大事にできたらいい。僕にならできる筈だ。
 そうやって信じて、みっともなく生き恥を晒しても、また会えるかもしれないなら、その方がいい。会いたいし、話したい。きっとそうなると信じたい。

 僕は寂しがり屋だから、やっぱり自分の相棒のような人が欲しいと思ってしまう。
 家族は居るけど、僕の物語を読んで、歌を聴いて、僕の深奥に触れてくれる相棒が欲しいと思ってしまう。
 あの子はそこに近かった。そういう人間をまた欲してしまうだろう。
 新しい関係を手に入れられるかもしれないと、そんな予感はある。きっとまた素敵なものを見つけられる。
 あの子に会えるなら、また会いたい。何度でも言える。しつこいかもしれん。

 もうちょっと成長したら、きっと今度は君を支えられる。役に立てる。
 だから、また話したい。遊びたい。ちゃんと受け止められるようになりたい。なる。



 と呼んでいい状態である気がする。

 数ヶ月、自分の中にわだかまりが生じた時に吐き出して、書き連ねて、何度も何度もそれを読んだ。
 同じようなことばかり書いてある。同じ苦しみ方をして、同じ悲しみ方をして、心がどうにもならない状態だとよく解った。

 そうして、壊れた。突然、壊れた。
 それは自分で願っていたことのようにも思う。
 相手の近況を知ることで、自分のやったことが如何に意味が無かったか、自分が如何に傷付いたかを知るのだ。
 それに何の意味があるのか。首の皮一枚で繋がっている今を、容赦なく斬りおとす為だ。
 そうしなければ、いつまで経っても同じことで苦しみ、泣けもしないのに悲しいと言い続けるのだと思った。

 疲れていた。とても疲れた。
 何百回、何千回と繰り返したのだから、そりゃ文章だって似通ったものになる。
 辛いのも、苦しいのも、いつまで経っても終わりそうにない。自分の所為だと解っている。
 酷く落ち込み、死にたいと願い、最後は助けを求めることなく消えられるまで、自分を徹底的に追い込むしかなかった。

 無論、そうすることで事態が好転するわけではない。そんなことは解っている。
 それでもやるしかない。もう終わりにしたかったから。耐えられなかったから。
 そうして壊れた。壊れきったと思いたかった。幸い、理性は残っていた。

 一日、何は無くとも泣いていた。気を抜けば涙が出た。
 自分の愚かさと、虚しさと、重く垂れこめる喪失感で頭痛がした。食欲も失せた。死にたいとさえ思った。戻りたい、帰りたいと。
 今のあの子は知らない人だ。もう僕の知っている子は死んでしまったんだ。
 現在のあの子を否定するようなことはしたくなかったけど、自分を保つ為にそこまで思わなければならなかった。

 泣いて泣いて、それでも楽にならない。いつまで経っても苦痛は纏わりついてくる。
 久しぶりにオンラインの友人と遊んだ。話はできなかったけど、声を聴いたら何だか安心した。
 その後は何も覚えていない。薬を飲んで、早々に転がった。夢を見た気がするけど、覚えていない。

 昼間は何もする気が起きない。何も手につかず、ぼんやりと音楽を聴く。
 ガムランだったり、水の音だったり、癒し効果があるとされるもの、或いはアンビエントなど個人的に癒しとなる音を求めた。
 その間、スピリチュアル系のことも調べた。この胸の痛みに説明がつくなら、何だって良かった。

 外に散歩に行って、音楽を聴きながら不可視の子らの声に耳を傾け、帰ってからおよそ一年何があったのかを思いながら、一本の小話を書いた。
 書きながら、いつも僕の人生ではいろんな人間と会ってきたが、その縁が切れそうな頃にまた別の縁が見つかっていることを思い出した。
 加えて、最近では途切れていた縁をまた復活させることもできた。自分が連絡しなかったってのもあるけど、失いたくないと思って連絡しようとしたことを思い出した。

 それから、何となく誰かと会える気がした。またどこかで縁を作れる気がした。
 あの子に会いたいと思った。無理かもしれないけど、いつかは会える、会いたいと何度も思った。
 腹立つし、言いたいことは山ほどあるし、忘れられない傷をつけられたし、話せないだけでこんなにも胸が苦しい。
 あの子の人生に僕は必要ないかもしれない、邪魔になってしまうかもしれないと、恐れている部分もある。
 だけど、それより何より話したかった。また遊びたかった。安心できる居場所を完全に失いたくないし、あの子の役に立ちたいと、力になりたいという想いが、いつまで経っても消えない。

 認めるしかなかった。赦すしかなかった。
 だけど、それは自分に課せられた使命のようなもので、それを越えた時にまた何かが手に入るのだと思えた。
 不可視の子達は僕の周りで様子を見ている。僕が常闇の主と会う時も、夢を彷徨う時も、ずっと近くに居てくれる。
 彼らは言った、「諦めないで」と。「あの子とまだ繋がっているのだから」と。
 どういうわけか、そう見える部分があるようだった。僕は繋がりを保てているのだろうか。

 自分の傷も辛さも苦しみも、放置できない。
 だけど、それ以上にあの子と離れ難い。浮気とか、不倫とか、そういう後ろ暗い理由じゃない。
 必要なだけだ。あの子にも必要としてもらいたいだけだ。僕はそういう存在になりたくて、いつかは頼られたくて、特にこの五年は頑張っていた筈だ。

 落ち込み過ぎて、天井に来てしまった気分だ。
 この跳ね上がり方は果たして良い上がり方なのか?
 このテンションのままなら、電車にだって飛び込めそうなものだが。

 あの子にとってはいい迷惑かもとか、心配する気持ちはまだある。
 でも、否定しきれない。まだ一緒に居たい。来世で会う前に現世で会いたい。
 離れていても繋がっているなんて、気の利いた一言を言えるような人間じゃない。だから、解らせるしかない。
 あの子に不幸なことは起きてほしくない。幸せでいてほしい。でも、僕のことも忘れないでほしい。我儘かな。

 人には理解され難い感情、内容だと思う。それも解っている。
 しかし、人に理解してほしいわけではない。あの子に伝わってほしい。
 もう呪わなくていいし、もう怒らなくていいんだ。僕のやることが変わったんだ。
 でも、やったことは事実だ。そこまで追い詰められたのも事実だ。その咎はこれからまだ続くだろうから、甘受せねばならない。

 どん底に堕ちても、凄い速さで這い上がれるでしょう。
 昔から、そうだった。人よりも数倍の速さで脳が働く、情緒が動く、次の行動が決まる。
 負けて泣いて立ち直る、君の速さについていこうなんて。正にその通りで。

 普通こんなことあったら友達やめるだろ~と引かれる気はするが、まぁいいではないか。
 魂ごと離してしまうようで、その繋がりを断てないのだ。或いは、いきなり断てる日が来るのだろうか。

 解らないことだらけだけど、何かに会える。誰かと会える。それは解っている。
 あの子と話したい、また遊びたい。それも解っている。
 その為に成長しようというのだ。

 大人と子どもなんて、曖昧な線引きは昔から嫌いだ。
 僕は成長するしかない。そうしなきゃ摑めないし、先に進めない。
 先の景色が見たいから、いつもせかせかしていた。今もそうだ。
 成長するしかない。もう始まっている。

僕にとっては僕の生きた意味は無かったけど、誰かにとっては僕の居た意味があったとか、せめてそういう救いはあってほしい。

 諦める為に、自分の首を落とす為に、相手のSNSを見てしまうってのは往々にして起こることだと思う。
 気になるし、近況らしきものは解るし。
 何も無かったかのように幸せそうで、楽しそうで、それを見たら、自分はいったい何をしていたんだろうと、虚しくなった。

 そう感じたのは渦中の人物だけでなく、別の友人に対してもそうだった。
 すごく辛いことがあったけど、半年も経たない内に次の幸せを見つけ出していた。
 前を向いて生きられるようになっていた。

 そうか、これが人間なんだ。
 辛いことがあっても、苦しいことがあっても、悲しいことがあっても、伴侶を見つけて次へ歩き出す。
 失ったもののことを考えずに、前だけ向いて自分の生を全うするのが、人間なんだ。
 初めて人間の強さのようなもの、偉大さのようなものを目の当たりにした。

 同時に、気付いた。自然に降りてくるようなもの。
 僕が居なくても良かった世界だ。寧ろ居ない方があの子も捻れずに済んだのでは、と思える世界だ。
 こうやって僕が語り掛けること自体、可笑しなことだったんだ。
 必要のない人間だから、いつかは離れていくから、それはこの歳になったら可笑しいことじゃなかったんだ。
 でも、そうやって生きていくのが普通なんだ。乗り越えたって、美談にでもできるようなものなんだ。

 実際、嫌なことがあったとして、みんな乗り越えるの早いもんな。
 あの子に至っては生活圏も被ってないから、思い出す頻度ってのは少ないだろうし。
 居ても居なくても変わらないってのは、それはそう。
 だから、余計に集中しやすかったんだろうか。

 何だか知らない人に思えた。知らない人だ。
 僕の知っている子は居なくなってしまった。死んでしまったのかもしれない。
 姉さんと同じように、死んでしまったんだ。

 この繰り返しに心が耐えられないと思った。
 死にたいけど、どうやって死ねばいいのか解らない。
 僕のこと覚えていてほしいとか、また話したいとか、そういうことを望める人ではないように思えてきた。
 だって周囲に居る人間で満たされているから。伴侶が居るから。
 人間としての責務を全うしようとしている人に、余計な荷物を持たせてはいけない。

 解らない。僕はいったい何をしていたんだろう。どうして前を向けなかったんだろう。
 悲しいから、辛いから、悔しいから、いつまでも思い出す。
 これが脳の異常で、僕の性格だというなら、確かに治さないと生きていけない。
 でも、それって何か大事なことを忘れていくようで、空恐ろしいものがある。

 呪詛、本当に届いていた? まだ生きているじゃん。
 やっぱり僕に力なんて無かったんじゃないの。あんなに本気出したのにね。
 不可視の子達が力を貸してくれるようなことを言っていたけど、妄想で終わるのだろうか。

 勿論、目に見えることだけが真実ではない。
 そうは言っても、見える範囲と受け取れる感情に相違は無い。
 歩き出したんだって、思います。僕は立ち止まったままだけどね。
 向こうにも立ち止まっていてほしかったわけじゃないけど、もう少し気にしてほしかったな。
 今回のことは僕が起因だから、そんなふうにも思えないか。
 ここで僕との関係を切って、今あるものを大事にしようって思っていても、不思議じゃないんだ。
 解っていたのに、ずっと遠ざけてきた。遠ざけるしか、自分を保つ方法が無かった。

 良かったね、と思った。僕がまとわりつくより、よっぽど健全だからな。
 でも、寂しいな。もう会えないんだね。話せないね。
 あのまま死んでおけば、確かにこんな辛いもの抱えなくて済んだな。
 僕が生きていた意味、あの子に何かあったかな。

 また行きたかった場所、見たかったものがある。果たせそうにない。
 さようならなんだな、たぶん。
 誰とでもそうなるんだ。それが人間と関わるってことなんだ。
 居ても居なくても良かった。
 戻りたい。帰りたい。
 生きていた意味、きっとある筈だ。また会えるといい。

「ようやく言葉にできるまで、理解が及んだんだな」
 と、感慨深げに言われた。
 あらん限りの言葉で尽くしてしたためた紙きれをして、気付いた自分の心情を言葉に当て嵌めてからのこと。

 疲れた。疲れきった。呪うのにも、怒るのにも、失望するのにも、絶望するのにも疲れたんだ。
 自分ひとりでは考えることにも限界がある。限界を越えたら独善的な思考しか浮かんでこないし、それらは大抵、自分に都合の悪いもので出来上がっていて、今よりもずっと首を絞めてくる。

 そんな状態がずっと続いて、長らくそれが普通みたいになって、昨今急に弾けた。
 不安で辛くて苦しくて、もうどうでもよくなってしまいたかった。
 死んで解放されるなら、それでもいいと思う。
 そこまで来た時、何もかもが穏やかになった。

 僕の心が死にきったのかと思った。
 穏やかな草原のよーな心情で、ただ思う。話したかった、とか。会いたかった、とか。
 悔悟なんて思ってもらえる筈もない。相手は自分のことで手一杯だから。

 ただ、昔に戻りたいとか思った。
 あの子はいつも僕を選んでくれなかった。誘いに乗ってくれなかった。
 なのに、僕が困っていると、言葉をくれた。手を差し伸べてくれた。
 そこに特別なものがあると、勘違いしたのがそもそもの始まり。
 そういうことになったら、僕も少しは諦められるだろうか。

 あの子自身も解っている。僕がどれだけ特別扱いしているかを。
 僕との関係を足場にして今の人間との関係を構築するに至ったと聞く。
 どうせなら僕との関係に活かしてほしかったけど、そこはきっと本人も否定するだろう。
 そうして、今の人間を選んだ。後悔はしていないと言った。
 きっと僕の誘いに乗ったら、日常が変わって後悔していたんだろうな。

 自分の日常が変わってしまうことを恐れていたから、僕の誘いを断った。
 それから何年かして、自分から歩み寄った人間には積極的に関わっていたように思う。
 会えば必ず出てくる、「彼女が~」て。そういうのは惚れた方の負けなのだ。

 僕は羨ましい。
 大した時間も掛けずに君の内側に入れて、大事にされて、選んでもらえた人間が羨ましい。
 僕もたまには選ばれてみたかった。相棒になってほしかった。
 日常が変わったって、君が自分の意思で選んでくれたなら、全身全霊で君を護ったというのに。

 で、僕の外見がもうちょっと良ければ選んでもらえたかな、とも思った。
 人間であることをこれほど悲しんだことはない。悔しかったことはない。
 人間でなければ、選択の余地はあったろうに。

 他の人間と君とのことなんて、知らない。
 僕にとっては、僕と当人の関係が第一だから。
 他の人間とどうなったかなんて、悩みがあれば聞くし力になるけど、上手くいったよなんて聞きたくない。
 どうせ僕を捨てるから。僕よりも良いものは、この世界に溢れているのだから。

 選んでほしかった。ちゃんと必要なんだよって言ってほしかった。
 僕と同じようにできないのは仕方ないけど、もう少しここの関係を大事にしてくれると思っていた。
 常ならばそんな期待なんて微塵も浮かばないが、相手が君だからね。
 僕ほどの熱量が無くても、大事にしようとしてくれるって、それだけの力があるって信じていたからね。

 でも、君もきっと凄く頑張ったんだろうね。
 僕から見たら輝かしい限りの日常でも、君はかなり神経を遣っていただろう。
 だからたまに会った時に話をしたくなるんだろうね。
 僕のことも、どうでもよかったわけじゃなくて。ちゃんとそれなりに大事にしようとしていたわけで。

 あの子にとっては、僕と過ごした時間は大したもんじゃなかった。
 それを認めるのは、とても辛い。
 あの子は僕を選ばなかったし、そのことを後悔もしていない。
 それを認めるのは、とても苦しい。
 あの子と僕はこれ以上、繋がれないし、必要なくなってしまった。
 それを認めるのも、とてもとても悲しい。

 でも、そうしないといけない気がした。望みなんて潰えて久しい。
 赦したら少しは楽になる?
 君が僕を選ばなかったとて、僕を必要としなかったとて、それを赦したら、僕は楽になる?
 いつもなら電話して解決に向けて話しているようなこと、もうできなくなった。
 どうしていいか解らない。自分でケリをつけるしかない。どうやって。

 見えない場所で、見てほしいと思って延々と言葉を吐す様は、誰から見ても不気味だと思う。
 ここまで執着されて、本当に疲弊したことと思う。
 普通の人間と結ばれて、普通の生活が手に入って、これからまだ人間としての役割を果たす人に対して、こんな執着は病んでしまう。毒になる。
 解っていて、手放せなかった。それをとうとう自分の意思で手放す時が来たのかな。

 僕の居場所がまた消えた。もう戻ってこない。
 僕の心も壊れきった。赦せるようになったなら、つまり壊れきったということだ。

 誰が傍に居たっていいさ、どんな関係ができたっていいさ。
 ただ、僕のことは忘れないでほしかったよ。ここぞって時の居場所になりたかったよ。
 僕がこんなんじゃなきゃ、できたことだったかな。近くに住んでいたら、どうにかできたかな。
 たらればって何度でも話しちゃうね。届いてほしい。

 また会えたらいいと思う。でも、きっともう会えない。
 憶えていてほしいと思う。でも、きっともう忘れていく。
 そうやって、あの子があの子だけの幸せを摑んでいくことを、僕は赦せるか?
 僕が赦す赦さないって話じゃないんだけどね。どの立場から言っているんだっけ。

 今のあの子がこれを読んでも、嫌悪感に眉をひそめるだけかもしれない。
 昔のあの子がこれを読んだら、溜め息吐いて話のひとつもしてくれるかもしれない。

 依存も執着も飽きるほど喰らってきた。それでも手に入らなかった。
 誰かを手に入れようと思うこと自体、間違いだ。
 赦したら、本当に会えなくなりそうで怖かった。でも、赦すしかない気がしている。
 完全に忘れられて、踏み台にされて、僕はそれを一生覚えていくのかな。

 その前に終わらせにきてほしい。
 僕の力が嘘じゃないなら、偉大なる天災によって魂だけ運び出して。
 来世ではきっと上手くやってみせるから。
 みんなは生き残って、僕だけ死ぬ世界になればいいよ。

 会えると信じろって、いつかまたって、そんな幻想で繋がれて心は腐りそうなんだ。
 何も見えない、聞こえないところまで来てしまったんだぞ。
 少しの娯楽で延命することはできる。できなくなった時、どうやって死ねばいい?

 みんなにありがとうを伝えねば。本当に死ねるかも解らないのに。
 死んで。死んで。これ以上は耐えきれない。自信が無い。
 諦めるしかないとか、赦すしかないとか、僕が報われない方法でしか世界が良くならない。
 これも罰か。重くて苦しいだけの刑罰がまだ続く。

 十年前くらいに戻りたいな。戻れるもんならな。
 当時のあの子がこんな話を聞いたら、何て言うだろ。笑われそう。
 いっそ笑ってほしい。僕はまだ別のものになろうとしている。
 赦すしかないの、赦すしか。

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