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ふらみいの、とうかの、言葉吐しと成長録

 そんな者に終ぞなれる気はせんが、目指すことで救われる心もある。
 今はそんなふうに自分を慰めて、来るべき時に備えるしかなかった。

 自己肯定感というものが俄かに騒がれるようになり、僕に欠如しているものはそれなのだと解り、辛いことや苦しいことを経て、ようやっと形を摑めてきた昨今。
 信頼していた友人に二十年越しに梯子を外され、そんな人間に依存して生きてきた自分を恨み、呪いながらも、それでも生きてきたのは何のためか。
 勿論、書くためである。この身に起きたことを余すことなく形にし、別の物語にし、いつか自分が辿る軌跡として残していかんがため。
 そう言うと崇高な目的になるけど、要はそんなことで命を手放す価値がその人間相手に無かっただけのことである。

 こうして言えるようになっただけでも、生殺し状態にあった二年前の自分には僥倖であろう。
 人間に縛られることなく、或いは自分を卑下し過ぎることもなく、山を下りて谷を抜けて、望んだ景色に戻ってくることができたのだから。
 それだけの力がずっとあったのに、人間に遠慮して、拠り所にして、育んでいたものを大事にしまって、しまい過ぎたのではないだろうか。
 それぐらい、思い出した。僕はあんな人間に頼らなくても歩けるし、よっぽど修羅場を潜って、責任を背負って、自分で決めて生きてきた。その価値も軌跡も汚されることは無く、あの子に汚すことはできない。
 その矜持こそが生きていく上での重要な柱となって、いつかまた会えた時に僕があの子を支えることのできる力へと変わる。そう信じる。
 あの子は最低な人間かもしれないが、そんな人間すらも許し、愛することができる偉大さに触れるといい。そんな尊大な態度だって、きっと冗談でも笑い事でもない。
 だって、僕にはできる。君にはできないことをずっと続けてきた、やってきた。そんな僕が、常に一歩先を行く僕が、それくらいできないわけないだろう。

 確かに、確かにこんな奴だった、僕は。尊大で、我儘で、何とか強くなろうとして、いつもあちこち見ていた気がする。
 いつの間にか人間の間で小さくなって、許されなくなって、萎んでしまっていたんだ。そうなるように仕向けられた、と言ってもいい。受け入れたのは僕だが。
 その洗脳状態にも近かった場所から、三年目の脱出劇だ。いいじゃないか、それで。
 僕が特別なのだから、君ができないのはしょうがない。目の前でそう言ったら怒るだろう。だから追いつけないんだよ。

 まぁ、そんなことよりも目下のところ気にしているのは、身重の今がどう転がっていくかだ。
 重要な検査をいつできるか解らず、初動が遅れたのは手痛い。
 遅れた分を取り戻すことは難しいので、今からでも調べてみて、その結果によってどうするかを決める強い心が必要だ。
 何も無ければ今まで通り。何かあれば選別の対象とする。
 一度は決めたことで、それ故に人の親となることなど無いだろうと決めた筈だが、今こうして目の前にもう一度その選択が浮上してくると、思うところは尽きない。
 でも、それもこれも命を連れていこうとした自分の責任だ。だから考えて、決定して、その結果を受け入れねばならない。
 物言わぬ人間の言葉を聞いて、自分が何をしたかを刻んで、それがやっぱり十字架のように思えても生きるしかないのだろう。

 何も無かったとして、この先に起きることなんて誰も予想できない。
 もしかしたら違う形で病気が見つかるかもしれないし、後天的な要素なんて幾らでもついてまわる。
 自分が病気になるかもしれないし、その所為で悪影響が降りかからんとも限らない。
 考えれば考えるほど暗澹たる気持ちになるし、何かをどうにかしなければと謎の焦燥感に襲われる。全く意味の無いことだが。

 心配したところで、なるようにしかならない。僕の力が及ばない場所での話だ。
 僕にできることと言えば、できる限りのストレスを減らして、健康と思われる生き方をするだけ。それによって保たれる命があるのだから、責任持ってその役目を果たすべきなんだろう。

 当てつけのよーに責任が責任がって言っているけど、それが僕の今の矜持を支えている。
 他の人間には解らない。この悲哀も孤独も伝わらない。
 だから強がってみて、その強がりを本物へと変えてみせる。あんな弱虫のままでいられるか。

 とはいえ、実際に命の選別をまたせねばならないとなった時、僕はどんなにか衝撃を受けるだろう。
 宿っただろう魂からは同じ文言しか聞かれない。生きたいとか、外に出たいとか、そんなくらい。
 僕はこの人間に遭ってみたい。ただそれだけの願いで、責任を果たそうとしている。
 他の人間よりも軽い動機ではあるが、それで表面的にも社会的にも何かを果たせるなら、まぁよいではないか。

 先のことは解らない。解っていることだけを意識して、乗り越えていくしかない。
 次に死にたくなった時は、誰が迎えに来てくれるだろう。

 燥良は笑って言っていた。拍子抜けするぐらい健康的な子が産まれてくれるよ、と。
 そうなれるようにしたいけど、本当にそこは僕の力が及ばないんだ。
 少しだけ歯痒い。もっと人間から乖離した存在だったなら良かった。

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