ふらみいの、とうかの、言葉吐しと成長録
後味の悪い映画ってスレで見かけて、気になっていた作品だった。
探してみたらあったので、早速、鑑賞開始だぜ!
で、個人的にはすごく良い映画だった。
少なくとも、バッドエンドだとは思わなかったな。
譬えるなら、P3で読んだ「ピンクのワニ」に近い話、だろうか?
あらすじとしては、
とある刑務所に入れられていたパーシーは出所した後、人生をやり直す為にバスに乗って、森深い村へと辿り着いた。
そこは噂話も一日で広まってしまうほど小さな村で、いきなりやってきた余所者に村の人達は戸惑いと好奇の目を向ける。
やがて、彼女が犯罪者であり、出所したばかりなのだと解ると、その噂もすぐに広まり、パーシーは居心地の悪さを感じながらも、村にある料理店で働き始めた。
その料理店は腰を悪くした老婆が一人で切り盛りしており、そのことを心配した村の保安官が、パーシーの下宿先をそこに定める。
老婆の家族は最初反対するも、人手が足りないということで、パーシーを受け入れるしかなかった。
少しずつ店主の老婆や周囲の人と打ち解けていくパーシー。
だが、彼女がどうも信用できない老婆の家族は、秘密裏に彼女のことを調べはじめる。
その頃、店主は自分の店を畳もうかどうかと悩み始め、パーシーはある提案をするが・・・・・・
と、こんな感じ。
いやー誰も憎むことのできない映画だな、と思ったな。
人間誰しも持っている心理だし、余所者があまり来ないような土地なら尚更、外から来た人のことは気にするだろう。
変に引っ掻き回されたら堪らないからね。不変なままの方が平和だと思えるしね。
とはいえ、この映画一本で田舎に偏見を持つのはあまり得ではないと思うので、「こういう場所もあるんだな」程度で観るのがお勧め。
実際、見かけた感想の中には、田舎に対してあまり良い印象を持てなくなった方もいらっしゃった様子。
実際に自分の目で現実を見るまでは、作品の中のことっていう認識で見た方が、精神衛生上、良いんじゃないかな。
パーシーを演じる女優さんの演技が、とても自然で良かったなと思うんだ。綺麗な方よね、そのわりに眼光がしっかりしていて。
周りに居る店主も世話を焼いてくれた奥様も、良い人ばかり。そして犬が可愛い。グレイシアが画面に映る度に癒される。
それから、風景と音楽とが非常に合っているなと感じるんだな。
冬枯れの森かーとか思ったけど、北部だっていうから寒いんだろな。それでも、広大な自然と水のせせらぎと、自然が好きな人はここだけでも一見の価値あり。
怖い場面とか、グロテスクな場面とか、全然無いので安心して観られます。
あ、でも人によっては、最初の村の雰囲気とか不快に思うだろうから、そこは我慢か。
けして楽しい話ではないけれど、心に残る作品のひとつでした。
以下、隠して感想書きます。
これは好きな映画だなぁ。最後に主人公が死んでしまうけれど、彼女の遺したものはちゃんとそこにある。
ここが「ピンクのワニ」を思い出す所以かな。
パーシーにとってパーシーの生きている意味とか人生は、もしかしたら意味が無いとか悲しいとか、否定的なものだったかもしれない。
だけど、彼女が生きて成し遂げたことが、彼女の居ない今でも受け継がれている。そういうふうに受け取れれば、彼女の死は悲しいだけでは終わらないと思うかな。
この映画に悪い人は居ないって誰かが書いていたけど、本当にそう思う。
パーシーをハメようとした(ようにしか見えない)不動産屋のおじさんだって、本当に伯母が心配で、自分の家族が心配だっただけなんだろうし。
まぁ、奥さんのことを悪く言ってしまう時点で、自分の感情を制御できない人なんだろうなー未熟者かーって思わなくもないが。
ハナも、シェルビーも本当に良い人なんだよな。
ちょっと頑固で気丈なハナは、人を見る目を持っている。最初はパーシーのことを疎ましく思っていたけど、心を開くのは早かったような。
シェルビーは自分に自信が無くて弱々しい人だなって思ったけど、パーシーに認められたことで、だんだんと失くしていたものを取り戻していく感じが良いんだ。旦那に酷く言われて傷付いても、ちゃんと言い返すことができた。強い女性だったと気付かされる。
パーシーも、擦れてて怖そうな娘だったけど、本が好きで文才があって、ちょっと不器用なだけで、優しい子なんだね。
ハナが怪我しているのを見て、すぐに駆け付けた。森に隠れるイーライに缶詰以外を届けてあげた。
最初のツンツン具合は心配になるけど、心を開いてからは笑顔が素敵な女性よ。
けど、パーシーの心を蝕む過去は重たくて深い。
教会の場面では、やはり泣いた。恐ろしくて、哀しくて、どうしようもない気持ちになる。
本当に恐ろしいことは、パーシーのような目に遭っている娘が、この世界に居るのだということだよ。そしてそれは自分にいつ降りかかるかなんて、解らないんだな。傍観者気取りだと足元掬われて、いつの間にか悲劇の主人公にされるんだよ。
なのに、刑務所で静かに過ごして、村でひそひそ言われても自分から突っぱねて、強いところのある女性だ。僕には無理だなぁと思いました。
子どもを育てようとしたんだ、養父の子どもだけど。そこからして、きっと強いんだ。
だけど、子どもは流れてしまい、養父には心ない言葉を浴びせられた。
言っちゃいけなんだろうが、それは殺してしまっても仕方ない。僕ならもっと早いうちに殺してしまうだろう。
耐えられないんだ。そんな男に汚されて、耐えることなんてできない。誰かの為でも、きっと耐えられない弱い存在だ。
すれ違って、和解もできないまま、ハナとパーシーは死に別れてしまった。
シェルビーとだって、良いともだちになれたのにね。
村の人達と、これから打ち解けられそうだったのに。
それから、イーライとだって話せたかもしれないんだ。
あ、イーライに頭を撫でられる場面が一番好きかもしれない。
あの風景はとても美しくて、パーシーの傷はあまりに深くて、きっと戦争に行ったイーライも人の輪に溶け込めないぐらい傷付いていて、だからこそあの場面となったのだろうな。
ただ美しいでしょう。そういう場面が時々あって、この映画は静かに美しいものだと感じるんだよ。
余談だけど、感想を漁っていた時に、この映画に対して否定的な意見もやはり見かけた。
「ベタだなぁ」とか「バッドエンドじゃん」とか「テーマがよく解らない」とか「超展開過ぎる」とか・・・・・・なんだか、それを読んでいたら、みんな目が肥えているんだなぁと感じた。
奇抜な展開でテーマも解りやすくて納得いく展開でハッピーエンド! というレールがビシッとした映画を観てきた方々なのだろう。皮肉ではなく。
何度か言っているけど、「”この為だけの”作品があってもいい」と考える派なので、教訓とか無くてもいいんだ、べつに。
「何が言いたいのか解らない」って言うけれど、映画がどれもこれも言いたいことだらけだったら、映画にする必要は無いんでないか?
それこそ手紙にでもしたためるなり、本を出すなりすればいいさ。言葉にすればいいさ。
けど、言葉だけでなく、音楽だけでなく、映像だけではないものを伴うのが映画なんだと思うから、もっと素直に受け取った方が楽しめると思うのよね。
ちなみにこの映画のテーマは「贖罪」なんだって。
犯した罪は消えない。だけど、再出発したそこからパーシーが何を為したのか、それを見届けられたから良いじゃない。
全てに答えが無ければ納得できないって、それは幼稚だなと感じてしまうんだけど・・・・・・まぁ、それこそ十人十色ね。いろんな受け取り方や感じ方や考え方があるんだよね。
けどね、水を差すようなくだらない物言いは目に余る。
そういうことを言いたくなるほど、感情移入できない、映画に集中できないってことだろうけどさ。
映画は映画のためにだけ在ればいいんじゃないか、うん。
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