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ふらみいの、とうかの、言葉吐しと成長録

後味の悪い映画を観よう企画でも立てているのか? というぐらいに、映画を観ております。
いや、そこまででもないか。昨日と今日と、まだ2つしか観てないもんな。

今回は「鬱になる映画」でも上位に上がると有名な「レクイエム・フォー・ドリーム」を観たぞ。
これもやっぱり、スレで名前を見かけたのだけど、有名な女優さんが名演技をしているというので、昨日観た映画繋がりで観ることにした。

前情報はいつも見ないで映画の世界に入るから、題名からではどんな話か予想がつかなかったんだけど、いや、本当に重苦しい映画だったな。


あらすじとしては、
4人の登場人物がそれぞれ夢を持っていながらも、クスリに手を出してしまい、人生の全てを失っていくというもの。

ある老女は夫に先立たれ、息子も家を出ていってしまい、孤独な毎日を送っている。
唯一の楽しみがテレビぐらいの彼女に、ある日、テレビ番組への出演依頼が届いた。意気揚々と彼女はお気に入りの赤いドレスを取り出すが、太ってしまって着られない。
そこでダイエットに乗り出すが上手くできず、友達が話していた「薬で痩せるダイエット」を始めるが・・・・・・

もう1人はダイエットする母親の息子。大学を卒業したものの、定職にも就かずに友人と手を出したヘロインにハマってしまっていた。
恋人もできて、彼女といつか店を出したいという夢を持つようになるも、クスリにどんどんハマりこみ、その所為で恋人とも破綻してしまう。
当然、家に帰ることもできず、クスリを注射で打つようになった彼の身体はボロボロになってしまう・・・・・・

その友人も、クスリのために危ない橋を何度も渡る羽目になる。
一度は捕まるも保釈されるが、そのおかげでクスリで儲けた金を使いきってしまう始末。
もっとクスリを手に入れる為、この友人と上記の青年とでフロリダへと向かうが、白人ばかりの町では褐色の肌は受け入れられず、差別的な目で見られてしまう。
そこで運悪く、警察に捕まってしまい・・・・・・

最後は、ダイエットする母親の息子と付き合っていた恋人の女性。
最初は小さな夢を抱いて恋人の男性と共に過ごしていたのに、クスリにハマってしまい、クスリがもらえないと解ると人が変わったように暴れてしまう。
何度も喧嘩した恋人の男性から、とうとう売春を言い渡され、彼女は好きでもない人間の為に身体を売るようになる。
その間、恋人は友人と共にフロリダに向かってしまい、彼女はクスリ欲しさに乱交パーティへ向かうのだった・・・・・・


と、まぁこんな感じですか。
最初は皆、夢を持って進もうとしているのに、薬物に依存してしまったばかりに、夢どころか家族も友人も恋人も失ってしまうことになる。
その転落人生っぷりが如実に描かれていて、これは確かに後味悪くなる映画だなという印象。

2000年に作られた映画と聞いているけど、音楽が本当に素晴らしいと思うんです。
人によっては古臭い音と聞こえるらしい。全然そんなことなくて、寧ろあの雰囲気に似合っていたと思うんだよな。

所々で別の映画のオマージュかな、と感じさせる表現もあったような。
薬物摂取する時のシュールな映像はヤン・シュヴァンクマイエルを想起させるし、水を張った浴槽にだるま浮きしているところは「パーフェクト・ブルー」を彷彿とさせるし、褐色の肌の友人とその恋人らしき女性がまぐわいあう様は「田園に死す」の一場面を思い出させた。
影響は受けているんじゃないかと思うんだよな、うん。違うなら違うでいいんだ、うん。


あらすじがもうネタバレしているような書き方だけど、以下に隠して感想をば。
人に勧めづらい映画ではあるけど、わたしはこれ観て良かったと思います。
女優の名演技をとくとご覧あれ。






何が怖いって、こういうことが世界のどこかで起きているってことが(以下略)

ホント、世の中って広いね。けど、自分だけは大丈夫なんて思うと足元掬われ(以下略)


壮絶な映画だった。演技とは思えないリアリティに引き込まれて、涙すら出ない。
一番同情できるのは、母親かな。夫に先立たれて、息子もちっとも帰ってこなくて、友達は居るけどそれだけでは埋まらない孤独に苛まれている。
そこで来たテレビ番組への出演依頼に、「一番幸せだった時の服を着ていく」って・・・・・・もう戻らないと思われていたものを、取り戻そうとしたんだね。

ダイエットしないと服が着られなくて、そこからダイエット・ピルにハマっていくんだけど、この転げ落ちていくとこが、マジでキツイ。
個人的な話だが、ショックを受けてどうしようもなくなった時に、手元に残っていたジェイゾロフトを、不安に駆られて飲んだことがある。所謂、オーバードーズというやつだ。
たかだか7錠だったけど、それでも次の日もずっと頭が重く、身体が怠く、なのにふわふわした心地がしていた。
この母親も、痩せない不満と不安に負けて、飲むしかなかった。それで、どんどん依存していく。
やめた後に依存するものが無い、寄る辺が無い、それは誰にとっても怖いことだと思うな。
彼女の場合は、クスリに頼ってしまった。クスリで痩せてテレビに出れば、幸せな日々を取り戻せると思ったんだ。
クスリによる躁状態って気持ちいいんだよな、何も不安なんて無くて、怖いことなんて浮かびもしなくて。だからクスリが切れた時が、一番怖くなる。

幻覚の症状に悩まされ、通報され、保護され、収容された先は精神病棟だったな。
そこで電気ショック療法って。しかもまだ食べないから、鼻にチューブ通して無理にでも食べさせて。
苦しいし辛いし、自分がそんな目に遭っている理由すら解らなかったろうな。
だけど、最後辺りで友達がお見舞いに来てくれたでしょ。あの時にやっと自分のやったことが解ったんじゃないかと思う。
友達に励まされて、どうしようもなくて泣いていたけど、ここからどうやって彼女は人生を立て直せるだろう。
というか、立て直せるのかな。まだ自分がテレビ番組に出る夢を見ているから、もうあそこから出られないかもしれない。


その息子も、母親を思っているところはあるけど、クスリに手を出したばっかりに歪んでいってしまったよな。
恋人を大事にしようとしていたのに、クスリばかりねだられて、だからか解らんけど売春を勧めたんぞ。どういうことよ。
このへんで、恋人同士はもうお互いのことでいっぱいいっぱいなんだなと解る。やるせないな、こんなこと。

で、これはわたしが解っていなかっただけだけど、この男は吸引式からいつのまにか注射式に変えていたのね。
腕が壊疽してしまったのは何でだろ、注射針を変えていなかったから?
どんどん酷くなって、切断するしかなくなってしまった腕。だけどまだ頭はクスリを欲しているのか。
最後の病院で「お友達もすぐに来るわよ」と言われて「いや、来ないよ」って言っていたのは、何でなんだろう。自分も相手も捕まっているからってことかな。


友人は良い人だったのに、褐色の肌であることから人種差別を受けてしまったんだね。
本当はどうしたかったんだろう。彼が幼少期の頃、母親と居る場面が思い出されるけど、それが一番辛いと感じたかな。
もう戻らない幸せな日々を思って、今の自分のこと悔いていたんだろうか。

息子の壊疽しかかっていた腕を何とかする為に病院にまで連れていってあげて、それは本当に良い奴だなって思ったんだけど、よく考えてみたらこの子も息子もクスリ売っていたんだよな。
しかも買ったやつをちゃんぽんして、自分らの利益にしていたんだよな。
やはり因果応報なのかね。人の社会で悪いと思われていることをしてしまった人間は、そう簡単には幸せになれないんだね。


息子の恋人だった女性も、一番明確な夢があったのに、どうしてクスリに溺れてしまったのだ。
けど、自暴自棄になるタイミングなんて解らないか。周りにとっては大したことない傷でも、本人にとってみたら死活問題になることもあるか。

恋人と一緒にお店を開く為だったのに、いつしかクスリの為に金を欲するようになった。
更に、その為に恋人から売春を言い渡された。この時の彼女の気持ちはどんなものだったろ。
クスリが買えるなら仕方ないのか、それともそんなことを言った恋人に絶望していたのか、どっちもあったろうけど、乱交パーティにまで行ってしまったのはね、ちょっとね。
あれはもう後戻りできないでしょうよ。見世物になってでもクスリが欲しいなんて、これからどんどん堕落していくんだろうな。

「早く帰ってきて」と恋人に電話した時の、あのタイミングが最後だったのかな。
彼女の理性を繋ぎとめて、やり直しできると信じられるようなタイミングかな。
けど、刑務所に居る恋人に、それはできないね。彼女を抱きしめる腕も一本失ってしまったね。


代償というものは大きくなればなるほど、取り戻そうと必死になる。
だけど、そもそも代償を支払わなければならないことを、どこかでしているからそうなる。
じゃあ何もしないことが正解なのかって言ったら、そうではない。
生きるってのは難しいな。この4人みたいにならない人生なんて、どこにも無い。

最後に4人とも同じ体勢で眠っていたけど、言われて気付いた、これは胎児の寝姿なんだね。
胎内回帰願望か。生まれ変わってやり直したいのか。
だけど、もう人生は遡れないし、生まれなかったことにもできないから、ここから再建するか、やめてしまうか。
それをあの4人に選択させるのは酷なことと思うけど、これが自分の行ったことへの代償だっていうんなら、誰が肩代わりすることもできないんだね。

クスリはやめようねっていう単純な教訓では収まらない何かがあるのが、「レクイエム・フォー・ドリーム」でした。正に夢への鎮魂歌。
生きている限り、夢は見るものだし、叶えたいとも思うだろうけど、あの4人はまだ夢を見られるだろうか。

他者の物語だーって傍観者面はしていられない。
自分の身に起こることとして、よくよく考えてみなければ。


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