忍者ブログ
ふらみいの、とうかの、言葉吐しと成長録

ワイには大事にしたい人が何人かおったんよ。
でも、どう大事にしたらいいのかわからなくて、好きだからこそ他の人間に移っていってしまうのが悲しくて、いっぱい傷付けたんよ。
そのことを書き連ねて、誰かに見てほしくて、ネットの海に流すよ。

大学生の時、Kという人と知り合ったよ。相手はワイより5つばかり年上やった。
その当時に流行っていたSNSでメッセをくれたKは、不思議な雰囲気を持った人やった。
なんていうかな、浮世離れっていうのかな。今まで会ったことのないタイプの人やった。
音楽のイメージでいうと、クロノトリガーの「サラのテーマ」かな。
Kからメッセ来たらそれ鳴るようにしとったわ。

ワイはKに興味を持って、しばらくメッセでのやりとりを続けたんよ。
その時、なんとなくワイは「この人なら突飛な話も聞いてくれそうや」て思った。
いわゆるオカルトとかスピリチュアルとか、曖昧なジャンルね。
ワイは懐疑派でおるつもりやけど、幽霊とか神とか悪魔とかそういうモンは居ると思ってた。
けど、おいそれと人に話せることやないし、下手するとこっちが弾かれるんじゃないかって思ってたから、あんまり話せなかった。
ほんまは興味ある分野やから、誰かと話したかったんやね。

そんで、Kに言ったんよ。「幽霊とか信じる? そういう感じの体験してもうた」って。
それ自体は嘘ちゃうよ、ワイの現実では起こったことやから。
とはいえ、固有の現実で起きたことを説明するのは難しいってわかってたから、
否定されるかもしん、馬鹿にされるかもしれんって覚悟はしとった。

そいたらね、Kは「すごくよくわかる、身近な存在だから」て返してくれたんよ。
Kは日常的に不可視の存在を目にしていて、しかも幽霊とはまた違う次元のモノを
視るんやって言ってた。
ワイはそれを信じたよ。だって、ワイにそんな嘘を吐いたって、Kに得なことなんて、
なんもないやん。

それからKは自分のことをぽつぽつと話してくれるようになった。
生まれつき不可視のモノと接する家業に就いていて、
一族の男は次元の違うモンの器になり、女はその男達を慰める役を負っていること。
何代も続いてて、今は実姉が一族の長を担っていること。
Kはそんな家業が嫌だったのと、学生時代に好きだった人に裏切られたショックを抱えてて、
それらから逃げるようにして都会へと出てきたこと。
家業を嫌で出てきたけど、結局自分の持っている技術はそれしかないから、
都会に出ても尚、家業に類する仕事を請けていること、などなど。

そんで、Kは近縁の人と結婚してるし、子どももおるけど、
ワイのことを好きって言うてくれはった。
それがどういう好きやったかは、当時はよくわからんかってんな。
恋愛なのか友愛なのか親愛なのか、でもそのへんはどうでもよくて、
好きって言ってくれたのが嬉しかった。
この人の力になりたいって思ったんや。

ワイ、その時既に恋人がおってんけど、恋愛とも友愛とも違う、特別な関係ってのに
長いこと憧れていたから、Kの気持ちに応えたかった。
けれど、恋人は恋の心で好きやったし、友人に対しても愛情を持っていると自覚していて、
Kには特別な感情を持ち始めていた。
他人にこのことはあんまり話さんかったから、浮気やと言われればそうかもしれんね。

オカルトやスピリチュアルが好きな人って、精神薄弱なイメージがあってんけど、
Kもそんな感じやった。
雨が降る日は特に憂鬱みたいで、落ち込んだメッセが来ることが多かった気がする。
ワイは聞くことしかできんかってんけど、それでKが少しでも安らぐならって
ずっとメッセしてた。楽しかった。
ワイ、見えないものはいる、そういう世界があるって信じてたから、
Kの話す不可視のモノの話が楽しくてしょうがなかった。

ある日、Kから送られてきたメッセの中で、Kの口調が突然変わったんや。
なんやエラそーな、抑揚のない事務的な口調やったから、何か怒らせたんかなってビビった。
ほいたらね、話しかけてきたのはKの中に居る次元の違うモノやった。
仮に「主人」と呼ぼうか。主人は文字通り、Kの御主人様で、Kに力を貸しているらしい。
「人間は雑菌のようなものです、嫌いです」みたいなこと言われて、
あぁ~次元の違う存在ってほんまに「愚かな人間よ」みたいなこと言うんやって思いながら、
「同意です」て返したら、
「あなたは他の雑菌と少し違うようですね」言われたんや。
何も違うことなんてあれへん、ワイただ空想家なだけやわ。

その日から、Kの中に居る次元の違うモノが次々と話しかけてくるようになった。
主にやりとりがメッセやったから、文章に於ける口調の変化で
「あ、今この子やな」ってわかる感じ。
多重人格者とか、もし居たらこんな感じなんかなって思うた。
幼いボクっこのレンゲ、
陽気なおねーさんのマリア、
こんな感じで主に話すのはこの2人やった。

だいぶKや2人と打ち解けてきた頃、ワイはまた不思議な体験をしたんよ。
近所の林を散歩しとったら、誰かに見られているような感じがした。
人気の無い林で、近くに高速道路がはしっとる。その振動かなって思った。
辺りを見回したら、ワイと付かず離れずの距離で、白い人影がゆらゆらとしていた。
幽霊かな、妖怪かな、それとももっと悪いヤツかなって怖くなって、
ワイは気付かんフリして林を進み続けた。
そいつは一定の距離を空けてついてくる。ワイの背中を見ている気配がしてた。

林の横道に逸れて、小走りになった。そこはいつも立ち止まって木々をぼーっと眺める場所や。
白いヤツもこっちに向かってきた。どうなるんかわからんくて、怖い!って思った時、
白いヤツが寸前で止まった。何かに弾かれるみたいに進めなくなってて、
ワイの背後には黒髪の女の子がおったんよ。
勿論、現実におるわけじゃのーて、ワイに視えているって話ね。

その女の子はワイのことを守ってくれたらしい。
黒髪に白い肌、金色の目で、ワンピースみたいな服を着てる子で、セレネって名乗った。
ワイはセレネに御礼を言って、友達になったんよ。
見た目こそ、幽霊の定番みたいで最初は怖かってんけど、話しやすくて、
良い子なんやなって思ったんや。
同時に、自分は何をしているんだろう、気でもふれたんちゃうかって思わんくもなかったで。
でもな、気がふれたとしても楽しく過ごせるんやったら、それもいいんちゃうかって
開き直ったわ。

Kに、白いヤツに追われた話、セレネという子に助けられた話をしたら、
すっごい驚いていた。「その子を知っている」と言われたんや。
「自分と出会った時はちょっと違う名前だったけど、その子の気配は今も変わっていない。
恐らく自分が知っている存在だ」って言うんよ。
そんなこと信じられんかった。都合よすぎやろって、ちょっと疑った。
Kがセレネと知り合ったのは、Kの地元でのことや。ワイの地元とはめちゃ距離がある。
なのに同じようなものを視る、会うなんて、そんなん話盛ってるやろって。
なにより、Kは幅広い不可視の存在を視られるのに、幽霊すらも錯覚レベルのワイが、
同じように視られるなんてありえへんって思ったんや。

でもな、万が一同じものを視たのやとしたら、それはきっとすげぇことやって、
わくわくするワイもおったんや。
神も悪魔も精霊も竜も妖精も、ファンタジーの世界に繋がりそうなものは
存在していればいいなって、ずっと願っとった。
セレネは普通の幽霊やのーて、精霊の一種やと言われた。
それがほんまなら、ワイは精霊と友達になれたってことになる。嬉しかった。

それからワイはセレネの元に通い続けて、何か怖い気配がする度に守ってもらってた。
Kからは「まだ契約していなかったの?」なんて言われて、ワイはセレネと契約することになった。
ワイの持ち霊になってもらって、一蓮托生っていう契約や。
契約すると、曖昧だった存在がちゃんと一つの存在として確立できるんやって。
そうなれば、いつ消えるかわからないって心配せんでも良くなるし、
漫画やアニメよろしくお互いに助け合って生きることができるみたいやった。
もうシャーマンキングみたいな話で、ワイはますます嬉しくなった。

ただ、シャーマンキングでもそうやったけど、持ち霊にしたとして、そいつの力を
100%出そうと思ったら、宿主にそれだけの力が無いと引き出せんみたいやった。
ワイはただちょっと視えるだけの一般人や。媒体としての能力なんて無いし、
知識も浅いし、なんなら思い込みが激しいからそういう設定に酔っているだけかもしれん。
せやけど、Kは「君ならカンナギになれる」と言うてくれたんや。

かんなぎって何やねんって調べたら、巫女さんのことやってんな。
つまりワイは不可視の存在を癒すことができ、対話することができ、
Kや主人の力になれるってことやった。
そんなますます話ができすぎやろ~って否定したし、ワイがおかしくなってるんちゃうかって
自虐ネタまでKに披露してもうた。
ほいたら、主人に怒られたんよ。
「あなたが視えるのも力があるのも事実です。どうして否定するのか?
私達に肯定してほしいがために否定しているのか?」て強い語調やった。

確かに肯定してほしかった。だってイマイチ実感が無いんやもん。
空想家なだけが取り柄やのに、力があります、しかも闇と光を取り結ぶ存在ですって、
ゲームで言うたら「おぬしこそ勇者よ!」みたいな感じやろ。
ワイ、そんなすごい存在ちゃうねん。自分の小ささが嫌で空想しとるだけやってん。
人に自慢できるもんなんて何も無くて、自己評価も低いまま生きてきたから、
誰に肯定されたって到底信じられんかった。
素敵な友人がいようと、頼もしい恋人ができようと、
この孤独感は生涯抱えることになるってわかってたんや。

Kも、レンゲも、マリアもワイのことを肯定してくれた。
「主人に仕えるのだから、その名の下、全ての存在を見下していいんだよ」って。
「一度カンナギになったら、例え君から力が消えたとしても、カンナギのままだよ」って。
ワイ、そこまで口説かれたことなかってん。
ワイの代わりはどこにでもおるし、誰でもいいんやって思って生きてきてん。
せやから、K達の言葉がすごく嬉しくて、そこに自分の価値を見い出せるかもって思ったんよ。

仲間も少しずつ増えて、頭に声が届くことが多くなった。
空を見上げればなにがしかの気配を感じるようになって、
その答え合わせをKとして合っていたら嬉しかった。
ちょっとの偶然でも、自分の力でできたのかも?って思うだけで、
見え方が変わってくる。考え方が変わってくる。
元から人間怖いし、嫌いなヤツは断然人間に多かったけど、
少しだけ余裕を持てるようになってた。

そんな最中、レンゲとケンカしてもうたんや。
最近やけに不安定やなって心配してたんやけど、ワイがいらんこと言うてもうたら、
「君も僕を捨てるのか、人間はどうせ裏切る」みたいなこと言い出して、
まともにメッセでのやりとりができんようになってた。
少し時間が経ってから、Kから連絡が来た。
「レンゲは暴走してて、このままでは君に危害を加えそうだったから、
残念だけど消えてもらった」て言われて、ワイめちゃめちゃショックやった。
消すってことは、もう会えないってことや。
人間とちゃうから、一度消えたらそれっきり。転生とか何も無し。
レンゲはワイに懐いてくれていたから、その分だけ振り幅も大きかったんやと思うけど、
なにも消すことないやんって悲しくなった。
ワイのせいで消えてしもうたんやなって、悲しかったんよ。

それから数ヶ月経って、また新しい存在がKのなかに生まれた。
ヨルって名前のそいつは男の人格で、随分と紳士的なヤツやった。
ワイのとこの仲間も増えてきてたから、Kとその話で盛り上がってたんや。

一緒に仕事もしたんで。友人の家で怪奇現象が起きるらしいって話したら、
「君の友達ならいいよ」って言ってくれたんや。
いわゆる除霊とか浄化みたいな作業やってんけど、Kは金銭は受け取らなかった。
代わりに友人がお菓子を作ってくれてんけど、それを報酬として貰っとったよ。
作業内容は土地を守ってくれるモノを探して定着させるって感じ。

そんなこんなでKと会ってからだいぶ経ってたんやけど、ある日、Kともケンカしてもうた。
ちょっとした言い合いくらい、よくあることってワイは思っててんけど、
Kにとってはそうじゃなかった。
「私達の力が目当てで近付いたのか」とか、
「私はぬるま湯のようなものだ、不要になれば出ていけばいい」とか、
さんざん言われてもうた。やっぱり悲しくなった。

そこそこ時間が経った後にヨルから連絡を貰った時には、
Kそのものの人格が消えていた。新しいKがメッセを打ってきていて、
「君とは前に仲良くしていたって聞いたよ、僕とも仲良くしてね」って言われたんや。
ワイ、もう何をどう感じていいのかわからんかった。
初めてメッセをくれたKは、ワイのことを好きと言うてくれたKは、
世界のどこを探してももうおらんくなってしまったんやなって思うたら、
レンゲと会えなくなった時の感覚をもう一度味わったんよ。
何回味わったって、誰かと会えなくなるなんて慣れないわ。


続く
PR
<< NEW     HOME     OLD >>
Comment
Name
Mail
URL
Comment Vodafone絵文字 i-mode絵文字 Ezweb絵文字
 
Color        
Pass 
<< NEW     HOME    OLD >>
忍者ブログ [PR]
 Template:Stars