ふらみいの、とうかの、言葉吐しと成長録
身を焼き尽くさんばかりの光を浴び、自分も見えなくなるほどの闇に堕ち、そんな乱高下の激しい精神で辿り着いた今日。
ほんの二週間前に死にそうになっていたことは記憶に新しく、というか昨日のことのように感じ取れるし、なんならまだ終わっていない。まだ僕は死にたい生きたい辛い苦しいを繰り返している。そう簡単に抜け出せるものではなかった。
信じると決めても、何かのきっかけでひどく落ち込む。
もういいやと諦めようとしても、ここで諦めたら永遠に途切れてしまうのではと不安になる。
どちらも不安障害から来るものなれば、薬でどうにかすることもできよう。
自分の性格から来るものなら・・・・・・やっぱ死なないと治らないかな。
生物として、本当に欠陥だらけだ。前も向けず、後ろを眺め続けることもできず。
先日、夢の合間にやってきた白い青年はサザンと名乗った。
サザンと言えば某人気グループしか浮かばなかった僕は、もっと良い名前は無いのかと思ってしまった。
彼は白い髪に白い患者服のようなものを纏い、猫目だった。控えめながらもしっかり喋る子で、ごく自然にうちを訪れた。
サザンが元々居たのは、あの子の住んでいる方だった。
僕が呪詛を行った後、土地神が離れ、牛鬼のような奴らが餌場として活用すると息巻いて出ていった後、居場所が無くてこっちに来たのだという。
これは正真正銘、僕の行いによる被害者なので無碍にはできない。すまんかった。
夢の合間に彼は言った。自分がここに来た理由と、界隈ではちょっとした騒ぎになっていたことを。
巫子が久しぶりに力を使ったと、彼らの間では少し騒がれていたらしい。姉さんが何かした方が影響力は強いだろうが、僕が何かやってもそれはそれで気になる連中が居るようだ。
それで渦中の巫子が気になって、ここまで来たのだと。
サザンは何人かの人間の気配を覚えていて、僕の辛い気持ちだとか苦しい思い出を知って目を丸くした。
「巫子ともあろう人が、あんな人間を気に掛けているのか?」
第一声はこんな感じだった。君らは皆して同じようなことを言うな。
だけど、皆そう言った後、必ず言うんだ。「大丈夫だ」って。
何が大丈夫なの、どう大丈夫なの。僕が壊れると不都合が生じるから、てきとうなこと言って延命させたいだけなんじゃないの。
それでも皆が言う。「大丈夫だ」と。その先は言ったり言わなかったりする。
サザンは「大丈夫だ、反省しているから」と言っていた。
いくら反省してくれていたって、それがこっちに伝わらなきゃ意味ないじゃん。行動に移してくれなきゃ解らないじゃん。
でも、あの子が僕に関して責任取ろうとしたことなんてほぼ無いし、反省していようが考えを改めようが、こうして離れた時はいつも僕から話し掛けなきゃ、再構築もままならなかった。
そんな子が、反省したとて、悪いと思っていたとて、自発的に動けるだろうか。しかも僕の為に。信じられないし、期待できない。
でも、だからこそ信じたいし、期待したい。他の人間との付き合いを経て成長しているのなら、今までは無かった誠意だろうが行為だろうが、僕相手にも見せてくれるかもしれない。
そうやってぐるぐる思考に陥って、泣けもしないほど傷付いて、自分が悪かったのか相手が悪いのかなんて疲れてくると、サザンは少し困ったような顔をする。そんなことで傷付くんだ・・・・・・という感じの顔だ。
巫子って呼んでくれるのは嬉しいけど、今は人間だもの。人間になんて生まれたくなかった。こんなことでって思われることで容易く傷付き、壊れるんだよ。
「そうして悩めるあなたの為に、偉大なるお二方が動いてくださっているのでは」と言われた。
確かに唐突なタイミングで闇の主と再度意思が繋がり、光の君が降臨した。あれは風呂場でだったか。相変わらずタイミングが悪い。
二人の反応もやっぱり「え、そんなこと?」て感じだったけど、僕が傷付いているのを知ると、力を貸してくれると言っていた。
ただ、二人の力を貸すということは、どういうことなのかを考えておいた方がいい、と誰かに言われた。紅弥だったか、エシュだったか。
僕の力ではどうにもできない。藁にも縋る思いで、何だって試す。
それほど追い詰められた。誰も傷付けずに、僕は僕の大事なものを取り戻したいだけ。
不可能かもしれないけど、やりたいの。解り合える機会があるなら、是非とも話したい。
僕のそういう思考を、主も光の君も愚かだと思ったことだろう。
でも、仕方ない。今は僕も同じ世界に生きる人間だもの。まだ手放せない。どうして。代わりなんてどこにも無い。
「巫子の考えることは不思議なことばかりだ」と呆れたのか、感心したのか解らないようなことを言われた。
まぁ、僕もそう思う。病気もあるとはいえ、些か偏り過ぎではなかろうか。
「あなたはあなたの意思と力で好きにできるのに、そうしないのか」みたいなことも言われたが、好きにできないのだ。
僕の力はバッファー向きだもの。そんなこと十年前から解っていた。自分で対象絞って何かやろうとすると、絶対に失敗するんだよ。失敗とまではいかなくても、目標を達成することが困難なのだよ。
この前だって結果を確認する形になったけど、ほぼ向こうは無傷だよ。ちょっと体調崩したかなくらいで。もっと大きな何かが起きれば自分に自信も持てたろうけど、こんなんじゃ無理だよ。
そうして泣き言ばかりの巫子にサザンはより一層、困った顔を見せる。あまりにも俗っぽいから、聞いていた話と違うって思っているのだろうか。
器である姉さんが有名人だったのはまぁ解るけど、その寵愛をいっとき受けただけの巫子なんて、みんな記憶に留めてもなかったろう。否、時間の感覚が違うなら、つい昨日のことみたいに知っているのかな。
「巫子はすぐ自分を傷付けるんだな」と言われる。んなこと言われたって。
自分に都合のいいように考えても、絶対そうじゃないって思いが付き纏う。間違っているのに、ちゃんと現実も見ないで良いことだけ見て生きていくのは、軽蔑している人間達の生き様そのものだ。
だけど、人間として生きるならその方がよっぽど良い。幸せになれるし、傷付くことも少ないし、少なくとも人間の責務は全うできる。彼らは人間であるためにそうするのだ。
そうできない人間も勿論居る。僕はそういう人達の方が好ましいと思って、近くに居る。
サザンからしてみればどちらも愚かしいかもしれないが、僕にとっては身近な存在なのだ。愚かだろうが何だろうが好きなのだよ。
陽が射す方が温かい。こんな僕にも優しいし、光を与えてくれる。
いつかこれも取り上げられる。僕が浴びるには勿体ないもんばかりだった。
サザンにとっては期待通りではない巫子だっただろう。僕の知ったことではないが。
人間ひとり思い通りにできない。力があっても上手く使うことができない。自分の感情も思い通りにできない。誰かに頼ったって、何度言葉を繋いだって、不安に勝てなかった。
どんどん状況や立場が悪くなっていって、ここより下に行くことが怖くて、でもいつか行くことになるだろうと思っていた。
もう来てしまった。何年も前から危惧していたことは、ここのブログを遡れば解る。
こんなに長いこと恐れて、ひとりで不安を抱えて、育てて、壊してしまったんだな。
話しても、あの子が、きいが向き合ってくれないって思って、ひとりで抱えてしまいこむしかなかったんだな。しまえてないけどさ。
今だったら違うかもよ。なんだかんだ僕の話はちゃんと聞いてくれるだろ。
そりゃ逃げ回るし、責任とか取りたがらないし、自分のこと悪く言われるのにも慣れてないだろうし、僕に言われるのも不服だろうけど、聞いてくれないことはないよ。
そうやって目の前で話してきたし、逃げたの追いかけたし、喧嘩もしたし、赦したじゃないか。それも完全な形ではなかったが、何とか繋げてきたじゃないか。
向こうだって解っていたよ、ここが特別な繋がりだってこと。周りに理解はされないだろうってこと。だから、僕ときいとでしか守ることができないんだって、そこまで知っておいてほしかったよな。
昔の僕よ、辛かったよなぁ、苦しかったよなぁ。何年も一人で考えて、抱えて、人に話しても「向かい合ってもらえなかったんだね」って、すぐバレてさ。
そうして僕が抱えた辛苦も孤独も、人に執着することを覚えた今のきいなら、少しは解ってくれるのかな。
そこでやっと報われることを望むよ。願うよ。そうすることがきいにとって良いのか悪いのか、そこまでは解らないけど、僕はきいのこと知りたいし解りたいし、僕に対してもそうしてほしいね。
上から目線ですまない。僕にも解らないことばかりだ。
ただ、何かを犠牲にしたまま何かを得て、その犠牲が僕ばかりなのは、ちょっと納得いかなくて。当たり前だろ。
話したいな。全部ぶつけて、同じものを背負ってほしい。誰が傍に居るとか関係ない、ここでのことに他の人間を交えて、いったい何になる。そうじゃない。
解ってほしい。解りたい。仲良くしたい、同じように望んでほしい。
誰も傷付けることなく、失うことなく。
僕はきいの言ったことで随分と傷付いたが、向こうもたぶん僕の言ったことで傷付いたことくらい、あると思うんだよな。
いつも醜いものが溢れて、暗い感情ばかりになって、辛くて苦しくなってどうしようもなくなるけど、それら全てをこうして形にして吐き出していくと、最後に残るのはいつも「仲良くしたい、失いたくない」だけだ。
僕が好きだった居場所は段々と消えていく。でも、思い出の中にちゃんとある。君らの中にも、忘れられているだけできっと存在している。それが信じられるから、まだ生きているのだと思う。
きい、だっけ。この子にも届いてほしい。彼女がどれだけ信じて、好きで、嫌いで、必要としていたか、ちゃんと伝わるといいな。
そんな小さなことが伝わらないほど、残酷な世界じゃないんだろ、ここ。
最後には何かしらが報われて、救いだと信じられるようなことが起きるといい。起きてほしい。
サザンはやっぱり困った顔をしている。でも、ちょっとだけ笑った。
「巫子は夢想家って言うのか、夢見がちなんだな。でも悪くないよ」
喧嘩売られてんのかな。
「この人間と繋がれるかどうかは解らない。でも、繋がれるといいと思う。その為にお二方が来てくださった。こんなにもあなたは愛されている。人間ひとりと繋がれない道理なんて無いと思うけど、どうなるかは解らない」
「でも、繋がりは消えていない。だったら大丈夫だと俺は思う。黄色でも、緑でも、青でも、その人間との大切な繋がりだから、消えない。消さなくていい。あなたが望むものを手に入れられるよう、祈る」
「捨てなくていい。いずれ光は当たる」
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