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ふらみいの、とうかの、言葉吐しと成長録

 順調に調子は悪くなっていく。
 呪詛の反動か、それとも元からの気質と病気の所為か、日に日に死を思う時間が増えていく。
 それでも日常生活に支障をきたしてはならないと、短時間の仕事にも出て、家族との会話もして、友達と約束をして、日々を凌いでいる。

 いつまでその誤魔化しが続けられる?
 本当は歩みを止めたい。手元にあるもの全てを燃して、僕の生を終わりにしたい。
 だけど、いざ死のうとした時に「生きたい」と願ってしまう瞬間が怖い。
 本当は生きていたかった、忘れないで欲しかったと心から強く願う瞬間が訪れてしまったら、僕は生きている間も死ぬ間際にも、自分に嘘を吐いていたことになる。
 嘘を吐いてまで生きて、嘘を吐いてまで死んで、誰にも何も残せないなんて、虚しいな。

 不可視の仲間は言った、あの子も辛い思いをしているのだと。
 彼らは僕の居る次元とは別を行き来して、人の心情にも踏み入ることが多い。それらの情報は僕の手元には持って帰れないけど、あの子達が言葉の膜を通さずに取得できる確かな情報だと、僕は信じている。

 曰く、あの子が今まで語ってきた言葉に嘘は無い。ちゃんと僕のことを見て、時には逃げ出して、それでも僕との関係を終えることができなかったのには、彼なりの理由がある。

 曰く、今こうなって辛いのは僕だけではない。あの子自身も人からの信頼を失い、自身の価値観を覆され、戸惑いと失意の中で懸命に生きている。
 僕に話したいことも微かながらあるかもしれない。だけど、軽々しくできない仲になってしまった。情けないと思う。でも、自分で選んだことだから、投げ出せない。

 曰く、僕との関係を完全に断ちたいわけではない。そりゃできるなら話せたらいいけど、話せない。今はとにかく近付けない。近付かれるのも困る。それぐらい微妙な均衡の上に、あの子とあの子の大事な人間が立っている。

 僕はいつかあの子に「全て捨てて行方をくらませても許してやる」なんて、偉そうに言い放った。
 でも、僕のことは忘れてほしくなかった。僕にだけは居場所を教えてほしかった。どうせ教えてくれないだろうけど、もしかしたらって。
 頑張り過ぎだと思ったんだ。不慣れなことして、初めての体験に脳が浮かれて、押し寄せる日々の生活と重圧で息をつくのもやっとなんじゃないかって。
 きっとすごく頑張るだろうけど、そのうちふと居なくなってしまう気がした。
 あの子には死んでほしくないと思った。すぐに駆け付けられる距離じゃないから、せめて死ぬ前にこっちに挨拶に来いと思ったんだ。
 その時に全力で止めようと。全力で話そうと。
 僕には君が必要なんだと、誰が君の傍に居ようと関係なく君を愛していると、何度でも伝えてきたから、また伝えようと思ったんだ。

 本当にあの子が少しでも僕のことを思っているのなら、そんな期待をまだ持ってしまう。
 どうしてこんなに辛いのか解ったよ。僕は信じたいんだ。君とまた話せる時を。

 今までのこと全てが、どうせあの子が自分には関係ないからと好き勝手言っているんじゃないかと思えて辛かった。
 たかだかちょっとの付き合いの人間を優先して、そこに届きもしない僕を顧みてくれないのが辛かった。
 どうせ人間は外見で側に置く者を決めるから、君の隣に僕が並ぶことは有り得ないんだけど、それでも少しは許してほしかった。
 あの子が今まで僕にしてくれたこと全て、今の人間と至る為の予行演習にされたみたいで、大事なものとしての格差がついていくことが辛くて、それを否定しきれないほど情けない行動ばかりの君が嫌いで、学ばないとこも嫌で、良い子ぶって八方美人なとこも嫌いで、だから呪詛で以て報いを受けさせようと思った。
 君が僕に額づいてまで謝ることなど有り得ないから、そこまで僕に対して悪いなんて思っても会いにくることもないだろうから、そこまでの価値なんて今もこれからも無いのなら、こっちも実力で無理にでも歩む先を捻じ曲げてやろうと思った。

 そこまでしても、昔からの積み重ねを否定しきれない。本当は否定したくない。
 あの子にとって、僕が何某かの代替品だった時なんて無いと思いたい。他の人間と比べてとか、関係性なんかを越えて、ちゃんと繋がりがあったと信じさせてほしい。
 僕があの子にしたことは褒められないことばかりだ。他の人間と交わってさえいれば回避できたものを、二十年も縛り付けていた。
 けど、その呪縛もあの子が望んで傍に居てくれたなら、僕の心も救われようというものだ。
 そこが一番期待できない。信用できない。でも、信じたいというジレンマで胸が痛む。身体の調子が可笑しくなる。心に罅が入って二度と元に戻らない。

 もうすぐ君と会った時間分だけ掛けてきた物語が完結する。
 それを是非読んでほしいけど、ここでまた連絡したらこじれると思う。
 僕が死ねば、君は君の大事な人に許されるのか?
 僕が死ぬ時は幼馴染みか誰ぞに物語を託して、それを死後にでも渡すことは許されるだろうか?

 本当に、こんな分かたれ方を経験するくらいなら、さっさと死んでおけば良かったよ。
 何度も思ったよ。あの幸せだと感じた頃に死んでおけば、この十年何度も感じて考えていたんだよ。
 あの子にとっては大したことな時間でも、僕にとっては幼馴染みと過ごした時間並みに大事だったんだよ。
 だからこんなに傷付いた。こんなに悲しくなった。死にたいと思うのは逃げたいからなのか、贖罪からなのか、解らないけど。

 僕が家族を持っているのはこの上ない幸福だ。
 でも、こんな人間の成り損ないと一緒だなんて、彼には悪いことをした。
 もっと早く決心がつけば、もっと速やかに自分にとどめを刺せれば、無駄な悲哀を周りに撒き散らすこともなかったのに。

 これだけ苦しんで痛んで辛いのに、君だって辛いんだよって聞かされたら、そうなのかなって思ってしまう。
 だったら君と話せるようになる時まで、僕はもう少し生きておくかって。
 君の話を聞いて、君にぐいぐい物を言えるのは、僕しか居ないんだから。そう信じてしまったから。
 何でこんなにあの子の為に動こうとするのかなんて、解らないよ。ともだちだからかな。あの子のお蔭で生きてこれた部分が大きいからかな。

 半年経っても何も終わらないし変わらない。傷ばかり深まって、もう治らないんだって解って、じくじく痛む度に呪詛が深まる。
 死にたいのに、死ぬのが怖いんだ。こんなに頑張っていろんなものを手に入れて築いてきたのに。
 まぁ築いた先でいとも容易く奪われてしまったから、死にたくなったんだけどさ。
 他にも手に入れて大事にしたいものが、いっぱいあるんだよ。それらにまで期待できなくなって、信じられなくなって、そんな辛さが君に解るか。無茶苦茶言っているな。
 全部あの子の所為にしたい。思いっきり引っ叩いてやりたい。それでも僕は君の味方でありたいと思う心がある。呪ったくせにな。それとこれとは別だよ。

 要らない人なのが僕なんだって解っても、期待も信頼も捨てきれない。
 だから余計に苦しんで、辛くなる。諦め方が解らない、失い方も解らない。
 どうせ君に届かないなら、誰かに渡しておきたい。こういう存在が無様にも人に期待する
様を、誰かに憶えておいてほしい。
 ただの狂人紛いの戯言だ。あの子の目に留まればいいけど、きっと最後まで読んでくれないだろうね。

 話したら解ることがたくさんあるのに。
 君が誰と居るか、何を背負っているかは知っている。けど、どうでもいいよ。
 話がしたい。君の助けになりたい。望むなら君を殺せる者で在りたい。
 僕はどうせ捨てられるだけなんだから、君に期待されたこともないんだから、好きにやらせてもらう。
 どうしてこんなに言葉が溢れてくるんだろう。壊れてしまったから、抑えが効かないのかな。
 本当に辛いんだったら逃げてもいい。周りの人間は君への評価を改めるだろうが、僕の中の評価は変わらない。
 どうしようもない奴だが、そいつに僕は助けられた。救われた。居場所を作ってもらった。その恩を返したい。じゃあ呪うなよって、言われそうだな。

 僕を居場所として必要とし、守ってくれ。忘れないでほしいな。
 どんな関係が増えようと、どこに行こうと、あの子との繋がりがあったなら、怖いものなんて無いままいられたのに。
 君にとってそんな存在になれなくて、すまなかった。

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